英訳し難い日本語 「安心です」

商品説明などで「安心です」という言葉が良く出てきますが、この言葉は英訳するとき悩みます。ちなみに辞書に当たるとfeel at ease とか rest assuredなどが出てきます。

例えば「鍵を閉め忘れたかどうかスマホで確かめられるので安心です」というのをI feel at ease because I can confirm whether I locked my house or not by my smart phone. で達意の英語にはなっていますが、I feel at easeが大げさというか、堅い気もします。このような時、英米人はI feel comfortableを使う、これが彼らの気持ではないかと思うのですが、どうでしょうか。

このcomfortable という言葉は日本人が使いにくい言葉です。私たちは「くつろいだ、心地良い」という意味で記憶しているからです。私と一緒に仕事をしたアメリカ人は日系二世でした。従って日本人の顔をしていました。彼は日本に来て日本人が自分と同じ顔をしているのでI feel comfortable.といつも言っていました。これを聞いて私は顔が同じだから「心地良い」とはどんな気持なのかといつも思っていました。今から考えると白人とか黒人とか面倒な人種差別もないし、アジア系だからと軽蔑される心配もない、だから「安心だ」ということで、comfortable と表現したのではないかと思います。

ちなみにI feel comfortable because I can confirm whether I locked my house or not by my smart phone.という英文を日本語に訳すとしたら「鍵を閉め忘れたかどうかスマホで確かめられるので安心です」という訳になってしまい、I feel comfortableは「安心です」がピッタリの日本語になってしまいますよね。

このようにこのシーンでは英米人は何と表現するかと考えると辞書から機械的に訳語を引っ張り出すより良い訳語が発見できることがあります。

 

切り口とする

それから「切り口とする」という言葉を使う日本人がいます。「を切り口として展開する」とか「を切り口として議論する」などです。私は翻訳の仕事を始める前は、この言葉を使ったことがありません。ですから意味も良くわかりませんでした。

「切り口」を辞書で見るとcutや cut edgeが出てきますが、これは上記の文脈では使えません。「切り口」とは一体何なんでしょうか。「切り口」を国語辞典で見ると分析や議論などにおける観点、手法という解釈が出てきます。これでやっとわかりました。先程の「~を切り口として展開する」は「~を観点として展開する」の意味だったんですね。日本語としては「~を観点として展開する」のほうが良いと思うのですが、何で「~を切り口として展開する」になったのでしょうか。恐らく誰かが「切り口」を使ってこのような表現をしたのが新鮮でインパクトがあったので、真似をする人が続き、いつの間にやら日本語として大きな顔をするようになったのだと思います。言葉の発展とはそんな傾向があります。

英語でも「かっこいい」というcoolという言い方があります。これは最近、使われるようになった言葉だと思います。20年、30年前には私は聞いたことがありません。その頃はbeautifulとかsmartとか、別の言葉で表現していたと思いますが、誰かが使ったのがきっかけで流行り始めたのだと思います。

話は戻って「を切り口として展開する」、「~を切り口として議論する」を「を観点として展開する」、「~を観点として議論する」と書き直せば英訳は”Develop from viewpoint of –“ または”Discuss from viewpoint of –“ となるのが容易にわかりますよね。viewpoint の代わりにperspectiveを使って”Develop from viewpoint of –“、”Discuss from viewpoint of –“でも良いと思います。

このように少し訳し難い日本語の場合、他の表現を考えることにより、英訳が発見できたり、容易になったりすることがあります。