「悪魔の言葉」日本語を英語にする人は悪魔の手伝いをしているの?

私は日英翻訳のフリーランス翻訳者になってから30年になろうとしています。下手でも能力がなくても30年もやっていると少しは自信も付き始めるときもありますが、一方では日英翻訳の難しさに唖然としてしまうこともあります。特に自然な英語にしようとすると壁の高さに気付き愕然としてしまいます。

日本語をヨーロッパ言語に翻訳していた宣教師フランシスコ・ザビエルが、日本語の難しさに唖然とし、日本語を「悪魔の言葉」(Devil’s own tongue) と呼んだそうです。一人称でも「私」の他に、「僕」、「俺」、「あたい」、昔なら「拙者」、「余」、「おいどん」といくらでも出てきます。しかも男の言葉と女の言葉の違いがあります。「はし」という単語を覚えたら、「端」、「橋」、「箸」と漢字によって意味は変わってきます。そして日本人でも難しい敬語があります。日本語を習う外国人は腹が立つと思います。

その言葉を英語にしている私は「悪魔の仕事」をしているのかと皮肉を言いたくなるときがあります。そのくらい英語にするのは難しいと思います。

例えば「私たちは長い間に渡ってこの事業のノウハウを蓄積してきました」を英訳するとその一例はWe have amassed knowhow of this business for years.となります。ところがアメリカ人に見せるとこれは自然な英語ではないと言ってきます。Amassはこのように使わないし、またノウハウをこのように使うことも珍しいと言うのですね。

「ノウハウを蓄積してきた」をcultivated our knowledgeとしてWe have cultivated our knowledge of this business over many years.とすると自然さが出るようです。また「ノウハウを蓄積してきた」を「経験を蓄積してきた」としてacquired experienceを使用し、We have acquired experience in this business over many years.とすると、さらに自然な英語になるとのことです。そうするとこの英文には日本語にあった「ノウハウ」と「蓄積」は消えてしまっていることになります。「そんな」と言いたくなりますよね。でもこれが本当の意訳であり、良い翻訳と言えることになります。

さてもう1つ例を挙げます。「安心」という言葉があります。辞書を引くと「安心」の訳語としてreliefがありますが、「鍵を閉め忘れたかどうかスマホで確かめられるので安心です」をIt’s a relief since I can use my smartphone to check if my house is locked or not.としたら通じません。このa reliefのところをgreatにして、It’s great since I can use my smartphone to check if my house is locked or not.とすれば直ぐにそのようなニュアンスが伝わると言います。さらに「安心する」というのをa load off my mindを使用してIt’s a load off my mind because I can use my smartphone to check if I forgot to lock my door.とすれば「安心する」というニュアンスがさらに出てくるそうです。

「悪魔の言葉」日本語のニュアンスを日本人と同レベルで理解できる英米人翻訳者はなかなかいませんし、日本語を元のニュアンスを変えずに自然な英文に出来る日本人翻訳者も数少ないと思います。日本人と英米人の共同作業のほうが良いのかも知れません。

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