「私語は禁止」は英訳出来ない

日本人は標語が大好きのようです。どの職場に行っても整理、整頓、清潔、事故注意、時間厳守などの標語が貼ってあります。ところがこれが翻訳者泣かせなんですね。だって「整理」と「整頓」ってどこが違うのですか。「清潔にする」も職場を清潔にするClean your work place. (あなたの職場を清潔にしてください) と訳せますが、これで本当に良いのかなと思いますよね。英米人はこのようなボーっとした表現をしませんから、この英語にはキョトンとすると思います。

また工場で「業務が終ったら手を洗うこと」なんていうのもあります。Wash your hands when you finish your work. と英訳するのは簡単ですが、英米人は「そんなの常識だろう、バカバカしい (It’s common sense. Bullshit!) と言いそうです。おっとBullshit!は「くそ」を意味するアメリカでは放送禁止用語ですね。そんなバカバカしいと言う英米人は意外と手を洗わない人が多いのですがね。
「アメリカではそんな標語はNGだよね」とアメリカ人アシスタントに話をしたところ、「そんなことはないですよ。けっこうありますよ、ただし、英語は”Employees must wash hands before returning to work.” (社員は職場に戻る前に手を洗うこと) というのが普通ですがね」と言って参考になる次のホームページを教えてくれました。goo.gl/vD1ssS
これ見てください、この種類と数を。中にはTシャツまであります。これはやはり洗わない人が多いと言うことだと思います。

それはともかく、アメリカ人はfree という言葉が大好きです。どのぐらい好きかは私たち日本人にはわからないと思います。そのくらい好きです。自由が少しでも剥奪されようとすると反発するのですね。ですから常識的、道徳的なことを上からの目線で、まして標語なんかで指示しようとしても誰も言うことを聞かないのですよ。

「私語禁止」という標語もたまにかかっている職場があります。これを英語に訳すとしたらNo personal conversations are permitted in the office.となりますが、これを見たらアメリカ人は怒ります。「話す」という自由を奪っているからであり、そんな職場では誰も働く人はいなくなります。Keep personal conversations to a minimum. (私語は出来るだけ少なくしてください) がアメリカ人に許されるギリギリだと思います。つまりアメリカ人の論理から言えば、私語は良いのです。

この前、あるオフィスを訪問したら「私語禁止」だけでなく、その隣に「私語は解雇」と書いてありました。プログラムの開発をしているオフィスでした。腕の良いプログラマは時給も良いですから、その人たちが長い間仕事をしないで私語を楽しんでいたら使うほうはたまったものではありませんよね。ですから「私はそういうことか」と黙々と仕事をしている人たちを見て納得しました。翻訳会社でも私語はほとんどしない職場のほうが多いと思います。

しかし、これを英訳したらどうなるでしょうか。”If you engage in personal conversation, you would be fired.” (私語をしたら、解雇となります)となります。ちなみに、ご存知の通り、You are fired! (お前は首だ) はトランプ大統領がテレビのリアリティショーで使い、有名になった言葉です。
これはアメリカでは絶対にオフィスには貼れないでしょうね。貼ったら非人間的な職場としてtwitterやfacebookなどのSNSでそのニュースは直ちに広がってしまい、その会社は倒産すると思います。

翻訳してはいけない言葉もあるということですね。