良い英訳をするには日本語を省いて訳すこと

百歳時代のことが喧々諤々と議論されていますが、先日ある人に会ったら平櫛田中(ひらぐちでんちゅう)という彫刻家のことを聞かされました。「六十、七十は洟垂れ小僧、男盛りは百から」と言い、自ら107歳まで過酷な彫刻家としての仕事を続けた隠れた偉人です。この人のことを話すのが本稿の趣旨ではないので興味のある方は下記久恒多摩大教授のブログをお読みください。https://plaza.rakuten.co.jp/hisatune/diary/200901240000/

「翻訳を30年もやって」と私は言うことがありますが、そんなことを言ったら平櫛翁より「洟垂れ小僧」と言われそうです。

それはともかく、長年日英翻訳をやって始めて気付いたことがあります。というか、前からも薄々気付いていたのですが、ここまで明確に言い切れなかったというほうが正しいかも知れません。 それは「良い英訳をするには日本語を省いて訳す」ことが必要だということです。

例えば英訳を始めたばかりの頃、「売上金」というのがありました。初めて英訳する言葉なので、辞書に当たるとsales proceedsというのがありましたが、普通はsalesで十分です。Collection of salesと言えば「売上金」の回収に決まっています。

易しい例で言うと「報告書」です。漢字通りに直訳するとReport paperですが、Reportには報告書の意味が入っています。英米人はReport paperとは言いません。

今でも頻繁に英訳する言葉に「指示書」があります。これも字面で訳したらInstruction documentになりますが、Instructionsで指示書の意味になりますし、このほうが英語らしいと思います。

少し難しくなりまして「直近の実績値」です。結論から言いますが、the most recent result figure ではなく、the most recent resultで、「実績値」の「値」に当たるfigureはないのが普通です。

今度は「中国市場全体の自動車販売数」Number of vehicle sales in entire market of China が正確な英訳ですが、「市場」という意味のmarketを削除し、Number of vehicle sales in entire China、あるいはさらに「全体の」の英語であるentireも省いてNumber of vehicle sales in Chinaとしても問題はないと思います。

何故このような問題が起きるのでしょうか。結局、英語と日本語の言語の性格の違いが原因だと思われます。

日本語は漢字があるために多少長くなってもわかりますし、「報告書」と「書」を入れることにより、重々しくなり、締まります。

ところが英語の場合、形は似たり寄ったりのアルファベットから構成されているため、漢字のように見た瞬間にはわからず読んで文脈として理解しなければなりません。

日本語では「報告書」の「書」を入れたほうが締まりますが、英語の場合、reportの後にpaper を入れると重複している(redundant) となります。英語の場合は、The fewer words, the better. (文言は少ないほど良い) となるわけです。

このような理由で「注意事項」はMatters to be notedではなく、Precautionsとなり、純資産額はnet asset valueではなくnet assetとなりますし、負債金額はliabilityでliability valueとは言えない、これが英語なのですね。

この考え方1つで英訳のやり方に幅が出るのではないかと思います。

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