「ちょっとそこまで」は訳せない

文化の違いによって翻訳できない日本語はいくらでもあります。その一つが「ちょっとそこまで」です。日本人が誰かと会って「どちらまでお出かけですか」と聞きます。これはWhere are you going? と英訳できます。それに対して「ちょっとそこまで」と答える時がありますが、これは英訳できませんよね。直訳するとI’m going over there. ですが、相手はさっぱりわからないと言うでしょう。「ちょっとそこまで」という日本語が抽象的で変なのですが、相手に詳しく答える必要のない時に、言える便利な言葉を日本人が作ってしまったということですね。

それから日本人の私でも何でここまで言わなければいけないのかなと思っている日本語に「むさ苦しいところですが、お入りください」 というのがあります。英語に直したら、Though my home is dirty and narrow, please come in.(私の家はきたなくて狭いですが、どうぞお入りください) となりますが、入りたくなくなりますよね。

「粗末なものですが、買ってきました。」(Though it is cheap, I bought it for you.)と言ったら「何で俺にそんな安物を買ってきたんだ」とお土産を受け取る気持もなくなります。

また「若輩者」というのがあります。例えば「若輩者ではございますが、当社の社長に就任します。」Though I’m still young and do not know anything, I will be the president of this company. (まだ私は若く何も知りませんが、この会社の社長に就任いたします)と、「何でそんなに無能なのが社長になんの」とブーイング、ついて行く人はいなくなりそうです。

それから、「私は浅学菲才の身であります」と言う人がいます。I’m still a man of shallow learning and limited ability. とでも訳したら良いのでしょうか。直訳ですから、「私は未だに学問は浅く、わずかしか知識はありません」と意味は日本語としては同じはずなんですが、英語の感覚だとこの人は「アホかいな」と思われてしまいます。

私が思う極め付きは、自分の妻を人に紹介する時に言う「愚妻」です。This is my foolish wife. と英語で発言したら婦人擁護団体の人が相手だったら、もう大騒ぎになるでしょう。不思議なのは自分の妻を「愚妻」と紹介する人は、絶対に愚妻と思っていないことです。

文化の違いとは言うものの、日本人って二重人格者 (hypocrite) なのでしょうか。

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