(2) アメリカ人が冷たくてドライというのはウソ(2) アメリカ人が冷たくてドライというのはウソ

アメリカ人のPが毎日オフィスに来るようになる。この人の仕事は日本人が翻訳した英文をリライトすることだ。他に4人採用したがこの人がいちばんうまい。以前にも書いたことがあるが、このリライターの腕はピンキリである。翻訳と同じで腕のよい人は早くてうまい。一時間で一頁しか出来ない人もいた。これでは仕事にならない。

Pは仕事はできるのだが少し変わっている。昼食用にと持ってきたニンジンやセロリを何も漬けずにバリバリ食べる。水は自宅からニョロニョロしたビニールみたいなものに入れて持ってきたもの以外に飲まない。輪廻転生(reincarnation)を心から信じている宗教者でそれに関する著書もあってお酒は飲まない。
そんなに道徳的ならセックスもしないのかと聞いたらそれは大好きだという。

とにかくアメリカ人は発想が自由である。かれらにとっては日本人の横並び意識は想像できない世界である。アメリカ人の考え方はさまざまであるが、それをまた平気でいう自由がある。日本人では来世を信じる人は少数派だろう。したがって日本人は自分が輪廻転生を信じることを大きな声では言わない。アメリカ人はここがちがう。少数派だろうが関係ない。自分が信じることは初めからガンガン主張してくる。
好き嫌いにしてもそうだ。私の机に置いてある灰皿を指して It’s disgusting.(これはムカツクよ)といきなり言ってくるのだ。相手が傷つくとかは取り合えず考えないのだ。

この点アメリカ人以外のネーティブスピーカーは違う。特にイギリス人は日本人と似ていて相手の立場を考えながら発言してくる。
ところがアメリカ人が自分中心だから冷たいかというと決してそんなことはない。家庭内のことでもグチを言ったりするとそれを解決しようと身を乗り出してくるのだ。プライベートな問題だからと遠慮なんかしてこない。わがことのように考えてくれるのだ。適当に相槌を打つ日本人よりよほど頼りになる。
このような意味では日本人が一般に持っている「アメリカ人は冷たくてドライ」という考え方は間違いである。

どうしても納期に間に合わないのでこのPと私が徹夜して仕事をやろうということになる。ところが夜中の一時を過ぎた頃、Pの左眼のコンタクトが取れてどこかにいってしまい、どうにも見つからない。そうしたら片目はコンタクトなしで仕事を再開しだした。
私が大丈夫かと聞いたら問題ないと私の質問は気にもとめない。この人の緊張感は大げさに言うと「鬼気せまる」というような雰囲気である。

悪いことは続くものでこのあとパソコンがフリーズしてしまった。2時間くらい夢中でやっていたそのデータはすべて消えてしまった。ショックを受けたPはありとあらゆる悪たれをつきはじめた。
このようなときのアメリカ人の悪たれは際限を知らない。聞いている私が何か悪いことをしていたのかと錯覚してしまう。10分くらいでやっと気を取り直して仕事を始めた。今度は5分ごとにファイルを保存している。

午前5時にはすべて終えることができた。アメリカ人と仕事をしてこれだけ集中力がある人は後にも先にもこの人しかいない。

 (3) 外人は日本人のような横並び意識がないへ
 英語かけこみ寺へ