パンフレットの英語化は何を注意すればよいかパンフレットの英語化は何を注意すればよいか
マイクサカモトです。本日は読者から質問のあったカタログを翻訳する場合の注意について議論したいと思います。

大学を出て数年しか経っていない筆者はあるメーカーでカタログの英語化を命じられました。ねじり鉢巻で和英辞典を片手に必死の思いで翻訳しました。今だったら三時間もかからないで訳せると思いますが、何しろカタログを制作するのは初めてですから、丸一日かかりました。
今から考えると信じられないことなのですが、日本人の私と上司が共同で訳したのに、この翻訳原稿がネーティブスピーカーにチェックされないまま印刷にまわされてしまったのです。
この結果、英米人が読むとわからないところがあるというとんでもないカタログが出来てしまいました。
これに懲りたその会社は次からは取引先に勤務していた日系アメリカ人に翻訳を依頼するようになりました。出来上がったカタログを見て私も感心したものです。的確な表現でとてもわかりやすく、その後の日英翻訳の大きなヒントにもなりました。
ところが問題もありました。英語としては見事なのですが、アメリカ英語に偏りすぎている表現もありました。もう一つはその翻訳者にまかせっぱなしで出来上がったものを技術部とか国際部が見直すということをしなかったため、正しく日本語が翻訳されているのか問題なところがいくつかありました。
このような経験の中からこの会社もカタログとかマニュアルの英語化のノウハウが蓄積されていったのだと思います。

さて読者の質問にお答えしましょう。会社概要を作成するのに注意するポイントに次のようなことがあげられます。

1. 英語は流暢であるが、冗長でなく的確、簡潔なこと。
日本語から英語にするときは日本人が訳したものをネーティブスピーカーがリライトしたほうがいいか、あるいはいきなりネーティブスピーカーが翻訳したほうがいいかという問題がありますが、一概に言えません。英米人が翻訳したときでも日本語から訳していることでその翻訳文には日本語の「におい」が残っています。出来ればその後、日本語を離れてもう一度リライトしたほうが自然な英語になります。
このような意味で翻訳をしないでいきなり英語で書いたほうがよいものが出来るとも言えますが、書くための資料が日本語しかないということがほとんどですから、この場合は翻訳するしか方法がありません。
このリライトも腕の差が出る仕事です。以前に筆者が経験したことですが、あるアメリカ人にリライトを依頼しました。A4で5枚、ビッチリ書いてもらったのですが、どうもしっくりきません。
そこで別な人に依頼し直しました。そうしたらその人はアッと言うまに書き上げてきました。以前の半分の量なのですが、私が不満だった冗長さがなくなり、要領よくまとまっています。量は半分になっても内容は以前と同じですから、その分、力強くなっていましたね。

プログラミングも下手な人がやるとやたら長いプログラムになるが、うまい人がやるととても簡潔なプログラミングになると言われています。
翻訳の場合、プログラミングほど短くはなりませんが、それでも簡潔でそれぞれの英文が締まります。

2. 英米文化と矛盾のないようにすること。
アメリカ向けに資料を作成するときはマイノリティーに対する差別は厳禁です。英語表現でも例えば salesman は salesperson や sales people と言うなどの工夫が必要です。ただし、これがけっこう難しい問題でmanpower, mankind, freshman, policeman等、問題のある英語はいくらでもありそうです。その理由は英語自体が男性の文化を基にして発展してきたからです。特にイギリスではアメリカほど敏感でないため、イギリスの女性は会社の会長を意味する chairman を平気で使っている人がいるくらいです。
このへんのことも私たち日本人ですと、知悉していないですから、アメリカ人のライターに相談すべきだと思います。

モデルを使うときは、二人以上にして、一人は黒人などのマイノリティーを使うべきです。
また日本語ではおかしくないのに英語の文化ではおかしいとか、日本では卑猥ではないが英語では卑猥だとかということもあります。筆者も以前に化粧品や製薬会社のメーカーのカタログを作成したとき、私が翻訳した英語を読んでネーティブが笑いだしたことがあります。「おしり」の英訳がおかしかったのです。身体の一部を英語に翻訳するときや、洋服や下着、靴下などの翻訳は要注意です。

3. 論理に一貫性があること。
英語はきわめて論理的な言葉です。したがって論理に一貫性を持たせることが重要です。日本人のライターでなれていない人は、あまりに多くのことを強調しようとします。このような文章をそのまま翻訳しますと、わけのわからない英語になってしまいます。英文としては、導入(introduction)、主張(statements)、裏付け(supporting facts)、結論(conclusion)の順に説得力のある文章にすべきですが、元々の日本語がそうなっていない場合は、難しいので、その場合は日本語を直してから英文に翻訳することをお勧めします。

4. キャッチはあまり飛びすぎない
日本人は言葉の遊びが好きな国民です。この結果、次から次へと新語、造語がつくられます。このことから日本語のキャッチコピーやスローガンは飛んでいる表現になることが多くなり、どれだけ飛んだ表現を生むかがコピーライターの腕ともなります。しかし英語にはそのようなことはなじみません。
日本語は漢字とかながあるので、「良い気分」とか「幸せな朝」とか、いきなり飛んだ表現が出てきてもわかりますが、英語では「何故良い気分なの」と聞かれそうで、分からない英語になります。

読者の方はもうお気づきかも知れませんが、後で翻訳するべき日本語を書くときに上に挙げたようなことを意識して書くことが英語のカタログを作成するときに大切なのですね。ただし、だからといって英米文化におもねることはありません。私たちの会社は日本の会社ですから、英語で表現されても日本の技術や文化が主張されていなければならないわけですね。

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