肩書きの決め方(1) 名刺の作り方肩書き英語(3) 事業部長は英訳出来ない
読者の方から肩書きについての質問で次のような質問がありました。

「マイクさん、一つ質問があります。肩書きで副社長とか副部長とかがあります。副社長を Vice President というのは知っていますが、副部長は何と言うのでしょうか。 Vice Director とか Vice Manager でいいでしょうか。また副を表すのに deputy というのがあります。
これを使って Deputy Director とか Deputy Manager でもいいんでしょうか。同じ副でも vice と deputy をどのように使い分けたらよいのでしょうか」

この質問にはまいりました。何故かと言いますと、私自身が vice と deputy の使い分けを知らなかったからです。
時間を作りネーティブスタッフと議論して作成したのが次の表です。
副会長 Vice Chairman
副社長 Vice President
副理事長 Vice Director General
副社長 Vice President
局次長 Deputy Director
副部長 Deputy Director
次長 Deputy Director
部長代理 Assistant Director
副所長 Deputy Director
副館長 Deputy Director
副本部長 Deputy Director
副支部長 Deputy Branch Manager or Assistant Branch Manager
副院長(医療機関) Deputy Chief of Medical Clinic
副店長 Assistant Manager
副支店長 Assistant Manager
副編集長 Deputy Chief Editor
助監督 Assistant Director
サブマネージャー Assistant Manager
副知事 Vice Governor

これを作成してわかったことは vice も deputy も、ともに副とか代理という意味があるにも関わらず、同じように使えないということです。ネーティブの間でも異論はあるかも知れませんが、Vice Chairman や Vice President は Deputy Chairman や Deputy President とは言えないようです。
反対に Deputy Director や Deputy Chief は Vice Director とか Vice Chief とは言えないそうです。困ったことに何故そうなのかは誰に聞いてもわかりません。残念ながらこれらはこのままで覚えるしかなさそうです。

えっ、何ですって。覚えるのかいやだ。何かもっと簡単な方法がないかですって。
ネイティブスタッフと相談したら一つだけいい方法が見つかりました。Assistant はどの言葉とも相性がよいようです。
Assistant Director、Assistant Manager、Assistant Chief というように英語として問題がありません。ですから困ったときは何でも Assistant を使用すれば解決しそうですね。

もう一つよくある質問に「事業部長」は何というかというのがあります。30年の経験から言わせて貰いますと、これは英訳不能だと思います。例えば「ソフトウェア事業部長」を英訳すると
Software Business Director
Software Project Director
Software Department Director
が考えられます。これらの訳語のどれにも独立採算を目指す日本式経営の「事業部」というニュアンスは感じられません。
それどころか上記のどの訳よりも Software Director の肩書きのほうがさっばりした英語らしい表現になります。そうすると「部」という意味もなくなってしまうわけですね。

「事業本部」も同じで、英語の場合は本部も部も同様な訳語になります。本部に Headquarters というのがありますが、これは基本的に政府機関、任意団体、軍隊など会社ではない組織でしか使えません。
「事業本部」より大きい組織に「カンパニー」というのがあります。これは日本語英語で、これを Company と直訳したらもちろんわからなくなります。

日本の企業では大きな順からいきますと、次のようなものがあります。
カンパニー、事業本部、事業部、局、部、課、係、班

これらに対応する英語は department、section と division の三つしかなく、しかもこれらの英語にはどれが上でどれが下かという意味はまったくありません。
つまり日本語の場合、課は部の下であり、係はそのさらに下ですが英語の department と section あるいは division にはどれが上か下かの意味はありません。
つまり自分たちでどれが上部でどれが下部かをきめなければならないことになります。

英米の組織表を見ると division や department という言葉すら使っていないほうが多いようです。私の手元にあるアメリカ系金融機関の組織図がありますが、Investment Banking, Corporate Finance, Capital Markets, Risk Management という英語だけで Division とか Department とかの言葉はいっさい使われていません。
たしかに department と section あるいは division に上部組織か下部組織を意味するものがないのでしたら、それらはいっさい使用しないほうが合理的です。

どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。それは組織に対する根本的な考え方が日米では異なるからだと思います。日本は機能より組織を重視します。アメリカは組織を軽視し、極端な場合、機能を重んじるため、無視することさえあります。

ただし、事情が異なるのは米軍です。アメリカ軍は組織を絶対と考え重視しています。そして世界で最強のアメリカ軍の組織は世界最高のものだと考えられます。これに対して米国政府は、譲らないと思います。トランプ政権のとき、少し揺るぎましたが、アメリカの発展を支えてきた基本であり、根幹であると思われます。

軍隊を除くとアメリカのビジネスは組織があるから強いという感じはしませんよね。マイクロソフトやアップルのように世界のトップクラスの企業でも強い会社や組織というより、個性溢れる人の集団というイメージが強いと思います。日本のトップのトヨタはそんな感じはありません。集団の組織としての会社の強さ、それがトヨタを初めとする日本の企業を支えている、そのような違いがあります。このような背景が英語と日本語の違いとなっているので、翻訳するときは、そのような文化的背景を無視するわけにはいかない思います。

筆者はよく日本の企業で部長という役職はアメリカの企業で言えば Vice President と対等あるいはそれ以上だと言っています。
ところが部長以上をすべて Vice President と訳すわけにはいきません。そこでそれらに対応する英語名の役職の一例を考えてみました。
副社長 Executive Senior Vice President
専務 Managing Director
常務 Executive Vice President
事業本部長 Senior Vice President
事業部長 Vice President
局長 Assistant Vice President

次は今までの英訳で出てこなかった役職名をいくつか挙げておきます。これもあくまで一例です。
部長付き Assistant to the director
主任 Senior Staff
主事 Chief of Staff
審議官 Senior Adviso
参事官 Advisor
顧問 Strategic advisor
相談役 Senior Advisor

この審議官、参事官を初めて見たとき、これは何だろうと思いました。これは官僚の役職で、課長の上、局長の下なんですね。局長は一部上場企業の社長より、偉いと官僚は考えています。課長でも一部上場企業の部長以上です。ですから、参事官と審議官というと相当偉いんですね。それでも英語になるとSenior AdvisorとかAdvisorと軽い言葉になってしまうんですね。これは英語の言語的軽さだと思います。

社長室 President's office
社長室長 Manager of president's office
社長秘書 Secretary to the president
情報戦略室長 Information Strategy Office Manager
法人ではない事業の「代表」 Owner あるいはProprietor
取締役相談役 Director and Senior Advisor
取締役技術推進担当 Technical Development Director
監査役 Auditor
開発室室長 Development Office Manager
営業部次長 Deputy Director of Sales Department
副支店長 Deputy Branch ManagerかAssistant Store Manager

最後にわが建設省の英文役職を挙げておきます。かたい英語の感じもしますが、意味をとらえてきちんと翻訳されているのがわかります。

人事局 personnel affairs bureau
局長 director
給与課 salary section
用度課 supplies section
主計課 budget section
営繕課 construction and repairing section
事務総長 secretary general
事務次長 vice-secretary general
秘書課長 secretarial section manager
館長 director
国立国会図書館長 Director of National Diet Library
建設省 Ministry of Construction
建設大臣 Minister of Construction
建設政務次官 Parliamentary Vice-Minister of Construction
建設事務次官 Administrative Vice-Minister of Construction
技監 Vice-Minister of Engineering Affairs
建設大臣秘書官 Private Secretary to the Minister of Construction
大臣官房 Minister's Secretariat
官房長 Director of the Secretariat
総務審議官 General Councilor
審議官 Councilor
技術審議官 Councilor for Technics
人事課 Personnel Division
文書課 Administrative Coordination Division
会計課 Finance Division
政策課 Policy Division
地方厚生課 Local Affairs and Welfare Division
監察官 Inspector
官庁営繕部 Government Buildings Department
管理課 Administration Division
営繕計画課 Government Buildings Planning Division
建築課 Building Division
設備課 Equipment Division
監督課 Supervision Division
建設経済局 Economic Affairs Bureau
総務課 General Affairs Division
調整課 Construction and Development Coordination Division
調査情報課 Research and Information Division
国際課 International Affairs Division
建設機械課 Construction Equipment Division
建設業課 Construction Contractors Division
建設振興課 Construction Promotion Division
宅地開発課 Building Land Development Division
不動産業課 Realtors Division

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