翻訳者への道翻訳者への道

こんにちは、マイクサカモトです。本日よりプロフェッショナルへの道となりますが、先ずは翻訳者への道から始めたいと思います。

翻訳者を志望する人が多いのにはいつも驚かされます。私が翻訳会社を始めたのは30年前です。在宅の翻訳者だった私が仕事を増やそうとして翻訳者の募集をしました。当時はまだインターネットも始まったばかりで募集するのは朝日新聞の募集広告が普通でした。5行位の広告をだしますと、応募者が何人来たと思いますか?少ないときで300人、多いときは800人も来ました。

現在でも募集広告を掲載したら応募者は100名を切ることはないと思います。何故翻訳者になりたい人が多いのか、その最大の理由はトレンディでかっこがよいからだと思います。

ところが実際にやってみると、これほど過酷なわりには収入が少ない仕事はないと思います。翻訳は職人の仕事です。英語の読解力は英検1級の能力が基本的条件で、その上で一人前になるには自分の背の高さと同じくらいになるほどの原稿を翻訳しなければならないと言われています。ですから実務で最低10年から15年の経験が必要です。ところがその収入はと言いますと、翻訳志望者にとって最も人気のある文芸作品を例にとりますと、仮に印税が7%として、定価が1,800円なら、1冊126円です。1万部売れたとして印税収入は126万円です。1冊訳すためには1日8時間以上作業して6ヶ月はかかりますから、1ヶ月の収入は21万円にしかなりません。しかも印税は本が売れた後ですから、支払は翻訳した1年位後になります。人気作家のシドニーシェルダンなどの翻訳は、向こう5年間にわたっての翻訳者が決まっていて、新人に仕事がくることはありません。マイナーな出版ですと、5,000部売れたとしても収入は半年で63万円、これでは生活も出来ません。

そこで翻訳で生計をたてるには翻訳会社に登録をして会社相手の技術翻訳をはじめるわけですが、一つの専門分野では仕事がすぐきれてしまいますから、さまざまな分野の知識を身につけなければなりません。筆者も以前は土曜、日曜は図書館めぐりをして専門書を読んだりしました。登録する会社が一社ではいつも仕事がきませんから、数社に登録しますと同時に仕事が入ってきたりします。いつも断っていると依頼がこなくなりますから、無理を承知で受けたりします。その結果、締め切りに追われて徹夜が続くなんてことがでてきます。朝から晩まで原稿とにらめっこ、これはどう考えてもネクラの仕事です。

このような生活が長く続きますとストレスもたまり、身体にも悪影響がでてきます。長く翻訳者をやっている人の中にはアル中になる人もいますし、眼を酷使した結果、眼の病気になる人もいます。筆者も眼に突然激痛が生じて網膜剥離という病気になり、失明するかも知れないと診断されたことがあります。

それでもクライアントは待ってはくれません。眼に包帯をし、両眼が使えないときも、アメリカ人と話しながら英語を編集して貰って納品したこともあります。

翻訳者は世間が狭くて変わっている人が多いのは事実です。電話の途中に突然怒りだしたり、電話代を倹約するためファックスを送信している電話を途中で切ってしまったりと理解に苦しむことを平気でする人がいます。筆者の体験したことで極め付きは、本も出版しているような腕の良い翻訳者で私が随分と教わったこともある翻訳者がいました。その人をスナックに招待したのですが、その人が隣にいた女性のお客様と話を始め、酔った勢いでしょうか、その女性の腕を触り出し、そのうちにその人の腕をなめ、顔をなめだしたことです、ところが相手の女性も酔っぱらっていて平気なんですよ。店のママからきつく注意されるまで続いていました。これにはびっくりしましたね。

またある翻訳会社から仕事を貰っていましたが、その翻訳会社のオーナー社長は、会う度にグチの連続なんですよ。駅で会うとグチ、打ち合わせを始めるとグチ、そこで飲んだらまたグチです。これはたまりませんよね。グチのせいかわかりませんが、その会社は無くなってしまいました。

悪い話ではなく、良い話をしますと、Aクラスの翻訳者で収入は普通1ヶ月、60万円から100万円です。通勤がなく、時間にしばられない、それで60万円から100万円ならよいでしょうか。若い翻訳者で体力があり、翻訳のスピードもかなり早いアメリカ人が睡眠時間を削って3,4ヶ月間頑張ったら現金で高級外車が買えたという話もあります。筆者も、1時間で5万円以上のギャラになるときもたまぁにあります。このような話をしますと翻訳者ほど素敵な商売はないということになるのですが、現実はそんなに甘くはありません。

筆者は同じ英語が好きなら他の仕事をおすすめします。

とはいうものの、コロナに遭遇した今の時代に百歳まで続けられる仕事はなかなか見つかりません。健康で向上心さえあれぱ翻訳者は長く続けられる仕事かも知れません。

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