通訳への道通訳への道
こんにちは、マイクです。
さて今週から「通訳の道」を始めますが、私自身は通訳の経験がありません。そこで、弊社で仕事をお願いした人で30才を超えて英語を勉強し始め、40才からプロの通訳として活動を始めた人がいます。S. Y.さんと言いますが、筆者の知る限り自動車をはじめとするメーカーの逐次通訳が得意のようです。翻訳もできる人で私も自動車や機械関連の翻訳をお願いしたことがありますが、きちんとした仕事をやってもらっています。

S. Y.さんに質問したことについて手記を書いてもらいましたのでそれを掲載させていただきたいと思います。

S. Y.さんの手記

「どうして英語を勉強したのですか」

仕事をしていてよく聞かれる質問です。私の場合、その頻度は予想以上に多いですが、考えるまでもなく言葉になるのは、「通訳を目指して英語を勉強したわけではなく、日本語以外の言葉で情報を得たかったから。いわば好奇心から」です。そして、具体的な経験を話すのが定例になってしまっています。私の経験は、大人になってから英語を勉強している人達のお役に立つことがあるかもしれません。

私が英語の勉強を始めたときは30歳を超えていました。それまでは英語とは全く関係のない仕事をしていましたし、学生時代の英語の成績も散々たるものでした。
それまでの生活・生き方を変えたかった私は、イギリスに行くことに決めました。アメリカではなくイギリスを選んだ理由は単純で、その1年前にイギリスの旅行をし、好きになっていたこと、そして、車の運転ができない私には、アメリカでの生活は非常に困難に思われたことです。
行くと決めた私は、とりあえず英語学校を探し、週2回、初級のクラスに半年間通いました。全く同じ内容のクラスで、先生が違うのみで、予習・復習の苦手な私にとっては、その代わりになるものとして同じクラスを同じ週に2回出席することにしたのです。これは、成功だったと思っています。
いよいよ出発日が近づくと、個人レッスン専門の学校に1ヶ月通いました。せめて、空港の入国審査を通り、下宿先までたどり着く程度の英語力を備えるためです。

ロンドンで1年間語学学校に通うことになるわけですが、最初の1ヶ月は1日8時間(昼食時間を含む)の個人レッスンを取りました。この集中勉強は、自分の怠けグセと限られた時間を補うために決定したものです。確かにお金はかかりましたが、最初からグループのクラスに入っていたら今の私があるかどうかわからないと思うくらい有益でした。
その後は、グループのクラスに入り、1日5時間の授業と、週2回(1回2時間)、学校の先生に家庭教師をお願いしました。この1年間は、たくさんの旅行もし、アパートの交渉から始まり、1人で生活する実践を通して多くのことを学びました。

これでは、「やっと日常会話ができるかな」というレベルですが、ここでいったん帰国します。
その後、イギリスの全寮制カレッジに行く機会に恵まれます。あるキリスト教の宗派の運営する、学位はでないカレッジですが、ここでの経験は貴重なものでした。小さなコミュニティでしたが、学生は世界中から集まってきており、政治思想はリベラルな人が多く、宗教もさまざまで、「何でも自由に話せる」雰囲気がありました。ここで、合計2年間勉強することになります。

さて、いよいよ「そろそろ働かなければ」と思うようになってきます。
イギリスと日本の間を往復している間に、通訳案内業(通訳ガイド)の試験を受験・合格していましたので、とりあえず通訳ガイド協会に登録することにしました。
このとき就職試験を受けようとは思わなかったのは、私の中にある企業イメージからすると、私のような年齢・経歴の者を採用する企業は皆無に近いだろうと思われたからです。
幸いなことにガイド協会からすぐにある大手旅行代理店の仕事が回ってきました。研修も受けていない全くの初心者でしたが、それまでの自分の旅の経験、人生の経験を活用して無事に仕事を終了しました。これをきっかけに同じ旅行代理店から継続して仕事をさせてもらうようになり、その他の旅行代理店からの依頼もくるようになり、また私個人のクライアントも持つようになります。

通訳はそのような仕事の一環として経験することになります。派遣会社を通して仕事をしたこともありますが、結果として「口コミ」の方が多かったです。フリーランスとして、通訳・通訳ガイド、そして時には翻訳をしながら生活しているうちに、通訳仲間の友人から「某メーカーで正社員の通訳者・翻訳者を募集している」という情報が入りました。それまでの経験でその業界のエンジニア達は働きやすいという印象を持っていましたし、友人の励ましもあり、年齢制限を無視して応募し、なぜか採用されてしまいました。2年半で退職するのですが、その後まもなく、そのメーカーと提携外資系企業とのあるプロジェクト専属通訳として、2年間、フルタイムで仕事をすることになります。

最近、本来のフリーランスとして活動を開始しました。仕事の確保は、通訳・翻訳ともに口コミが主になると思っています。通訳としては、以前に仕事をしていた企業、新しく紹介していただいた企業等を中心に仕事をしていくつもりです。収入は減るでしょうが、老後もずっと続けられる自分のペースを作るのが最大の目的です。今までの経験から、それも可能だと思っています。企業内にいると、やはり「企業戦士」と同じペースで仕事をすることになりますが、それは、もう十分に経験しました。

実際に仕事をしてみれば分かりますが、「思いがけないところに仕事があったり、思いがけないところ(人)から仕事を紹介されたり」、思いがけないことが意外と多いのです。思いがけないことの大小はあるでしょうが、人生とは思いがけないことの連続なのではないでしょうか。何事も、チャレンジしてみなければ分からないことが多いのではないでしょうか。考えていても始まらないことも多いです。行動してみましょう。そこには何かがあります。最後に、矛盾するように聞こえるでしょうが、「私は運が良い」と思うこともしばしばです。40歳を過ぎてから今の仕事を開始し、フリーランスで生活できるだけの収入を得られているのも、運が良いだけに過ぎないかもしれません。

具体的情報・アドバイス

1. 日本にいてヒアリングを身につけるのは、テープを繰返し聞く、音楽、映画等好きなものから吸収する等の一般的なことしか言えません。ラジオ、テレビの外国語放送を聞くのも手段です。

2. 私は、通訳学校はほとんど行ったことがありません。行こうとしたが、仕事が忙しく行く時間がなかったというのが実態です。同時通訳のブースに入れば別かもしれませんが、実際の通訳現場では、社会人としての常識が役に立ちます。通訳者にはそれぞれスタイルのようなものが出来上がっていき、個性が出てしまうものです。通訳技術も大切でしょうが、それよりも、通訳している内容を理解して通訳することのほうが大事ではないでしょうか。

3. 通訳ガイドは2つ協会があり、通訳協会もあるのかもしれませんが、私は知りません。実務経験のない通訳を使ってくれるかというと非常に疑問です。これも運が関係してくるのかもしれません。小さなきっかけから自分で道を開いて行くしかないと思います。その場合、自分はプロという自覚と自信を持ってやってください。
個人的つながりがない場合は、とりあえず派遣会社から挑戦してみてはどうでしょうか。新聞等の募集広告も情報源です。企業が、適材が見つからなくて困っているのも事実です。

4. 収入は一言では言えません。大手通訳派遣会社の料金表が参考になるでしょう。もちろん手取りは、その料金より数割低いと思って下さい。逐次通訳で、1日\45,000〜\100,000位でしょうか。こればかりは、レベルと雇用主によって代わります。もう1つ、自分の料金というのを決めるのも大事だと思います。年収となると、本当に個人によって違うと思います。何日仕事ができるか、あるいはするかによっても異なってきます。

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