ぼったくり運転手につかまる

フロリダ州フォート・ローダーデール

中継地点シカゴからフォート・ローダーデール空港に着いてタクシー乗り場を探していたらネクタイをして、無線電話を持った空港の職員がどこまで行くのかと聞いてきたのでホテルの名前を言ったらこっちに来いと言われたのでついていったら車があり荷物を乗せられてしまった。
何のことはない空港の職員でも何でもない。本人がタクシーの運転手だったのである。乗って走り出してから50ドルだと言うのだ。ずいぶん高い。アメリカで空港からダウンタウンまでタクシー代が50ドルもかかるところはニューヨークとかシカゴくらいでサンフランシスコでも35ドルで行く。隣の町のマイアミだってそんなにかからなかったはずである。
そんなに何で高いのかと聞いたら30分もかかるところにホテルがあるからだと言うのである。ともかく走り出してしまったのだからどうにもならない。
ところがスピードを出さないどころか、かなりゆっくり走っているのだ。しかもどうも遠回りをしたりして時間稼ぎをしているようだ。それでも15分くらいで着いてしまった。降りようと思ったら50ドル払えと言う。なにしろ荷物をもらうまではこちらのほうが弱い。仕方なく嫌々払った。
こんなぼったくり運転手にだまされたのは初めてである。いつもならメーターがないタクシーに乗るときは必ず運賃を確認してから乗っていたのだが、今回は相手のほうが上手であった。
後で聞いたら普通は20ドルくらいだそうである。

海外出張ではいろいろな失敗をする。タクシーで法外な料金を払ったり、釣り銭を間違えて大損をしたりする。筆者はコペンハーゲンで釣り銭を一桁間違えて日本円にして数千円の釣り銭を払ったことがある。アメリカはタクシーに乗らないとどこにも行けないが州や都市によって違うので全ては覚えられない。

ホテルにチェックインしたのが11時を過ぎていたのでルームサービスも終っている。夕食はシカゴで買っておいたマックのハンバーガーですますしかない。ふんだりけったりである。

アメリカは飛行機が遅れるのが常にあるので目的地での食事をいつも考えておかなければならない。狭い日本のようにどこでも買い物は出来ない。

某月某日

午前10時に取引先候補のトムと初めて会う。30才を少し超えたくらいの温和で物静かなカリビア諸島出身の男性である。メールによるやり取りからはもっと声の大きくてよくしゃべる人を想像していたが、はずれた。
それでものみ込みは早いし、ムダ口もあまり聞かないので午前中いっぱいかかっても終らないかなと思っていた商談があっと言う間に片付いてしまった。
アメリカのすごさはこのように英語を母国語としない人が市民権を得てアメリカの社会で主要な立場につくことだ。この人も国際石油会社のエクソンに入り、セールスエンジニアとして活躍した後に独立している。

昼食はトムから教わったビーチにでも行ってその近所の中華料理店にでも入ろうと思ってタクシーに乗ったら、そこは何にもない、フォート・ローダーデール・ビーチに行かなければいけないとそのタクシーの運転士は言うのである。ホテルに帰ってくれと言ったのだが、フォート・ローダーデールでないと何にもないから困るはずだと言い返してくる。説得がうまくいかないとわかると、ため息までつかれるしまつだ。冗談ではない、客が行きたいところに行けないなんてこちらのほうがため息をつきたいと思ったが、とうとう相手の説得力に負けてしまった。
タクシー代は20ドル、往復だと40ドルもかかった。随分と高い昼食代になったが、まあ食べられるレストランだったし、すぐ近くのフォート・ローダーデールビーチも見ることができたのでだまされた気はしなかった。

夕食はビールでも飲みながら楽しみたかった。ところがホテルのまわりには何もない。だからといってタクシーでまた40ドルもかける気はない。
ためしにホテルのそばの食堂みたいなところに入ったらビールはないと言われた。それでは仕方がないとその店を出たらそこのオーナーが追いかけてきた。何かと思ったら、そこから見える位置にあるレストランにはビールがあると言うのである。
こういうときのアメリカ人は親切である。日本人なら一回入った後に気に入らなくて出て行こうとしたら嫌な顔をされるだろう。下手をすれば塩までまかれる。
もっとも日本の食堂でビールが置いていないところはないかも知れない。ところがその教えてもらったレストランに行くには信号を二回わたらなければならない。これが問題なのだ。このへんの信号は歩行者のことなんかまったく考えていない。交差点にある電柱のようなものにあるボタンを押さないと歩行者用の青信号にならないし、なっても5秒くらいで赤信号に変わってしまうから「ヨーイ、ドン」で走らないとわたりきれない。日本の国道の5倍以上ありそうな道で車はビュンビュン飛ばしているから、命がけだ。いくらアメリカ人でも全力疾走しないと渡れないだろう。
この「地獄の信号」をやっとの思いでわたり、教えてもらったレストランに行ったらファーストフードに毛の生えたような料理しかないのである。トホホである。
これではとてもビールを飲む気にもならない、やむを得ず戻ってホテルのレストランに行こうということにした。
普通だったら話はこれで終るのだが、これが終らない。なぜ終わらないかというとホテルに帰ったらあるはずのレストランが無くなってしまったのだ。「そんなバカな」とよく見たら、その場所が模様替えしてバーに変わっているのだ。

レストランはないのかと探していたら若い女性がレストランを探しているのかと聞いてきたのでそうだと答えたらご案内しますときた。つまりその女性はレストランの係員だったのだ。
ところが案内されたところはレストランといっても普通の部屋にテーブルと椅子が並べているだけなのである。インテリアも飾りもほとんどない。あるといえば3枚ほどの絵が臨時に障子みたいな仕切りにかけられているだけなのである。雰囲気も何もあったものではない。

そんなところだから他の客も入る前にメニューを見ると雰囲気に比べて値段が高いので帰ってしまうのだ。そんなわけで客はわれわれ一組だけで、自分たちの家で食事をしているみたいなのだ。
それにしては値段だけはしっかりとっている。これでは割が合わないと思った私はいたずら心が出てきた。部屋に戻って冷蔵庫で冷やしておいたビールを何本か持ち込み、そのレストランでは飲み物の追加はいっさいしないと考えたのである。
アメリカのレストランではドリンクを持ち込んでも文句は言われないからだ。 案の定、何も言ってこない、知らん顔をしている。「しめしめ」と心で笑いながら、部屋から持ち込んだ缶ビールを何本か楽しませてもらった。これでやっと帳尻が合った。

<英会話応用例>

このホテルから空港までは何で行けますか。(What transportation is available from this hotel to the airport?)

朝4時半にタクシーを手配していただけますか。(Could you arrange a taxi for 4:30 in the morning?)

タクシーは一人で乗れますか。あるいは他の人と一緒ですか。その場合、料金はいかほどですか。
(Can I use the taxi alone or will it be shared? What is the taxi fare?)
バッゲージはその時、部屋からロビーまで運んでくれますか。(Could you arrange our baggages from the room to the lobby?)

会計は今出来ますか。そのとき、後で頼むルームサービスも入れてくれますか。
(Is it possible to pay the bill now? Could you include the room service we will order later?)
会計明朝に用意しておいてくれますか。(Could you arrange the bill by tomorrow morning?

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