ロンドンから出張

午前8時にロビーでイギリス人社員のH君と落ち合い、遠出をする。地下鉄で7つ目の駅で列車に乗り換える。そこから1時間強の距離である。駅からタクシーに乗ったが行き先に着かない。田舎なので住所の番号が明確に書いていないのである。携帯から訪問先に電話をしてやっとわかる。

商談は2時間。日本のエージェントに不満のようで弊社にその代わりをやってくれないかと打診される。終了後にタクシーを呼んでもらう。次の列車まで30分ほどあったが、食べるところはなさそう。朝も食べていないのでお腹はすいていたが、ロンドンにいったん戻ってから何か食べようということになる。

ロンドンに着いてから次の列車まで 20分くらいあるが、まともな店に入っている時間はない。ペストリーというお菓子のようなパンが美味しいと言われたが、私は怖い。一番小さくて3ポンド (480円)のものを買って恐る恐る食べた。まぁ、食べられないことはない。

列車に乗り込んだらアナウンスがあって15分ほど遅れると言う。H君はイギリスの列車は遅れるので困る、日本はこんなことはないと不満たらたらである。「でも待って。イギリスは君の国だよ」と言いたくなった。

しばらくしたら他の乗客からこの列車は運行中止になったと聞かされ、下車する。日本で汽車が運行中止になるのは雪とか台風とか、不可抗力のときだけだろう。イギリスは日常茶飯事だそうである。アメリカの飛行機が遅くなるのと同じである。

次の訪問先とは話がはずんだ。こちらのプレゼンに対して興味を持ち、商談を続行することを確認しあう。この会社は20人くらいの小規模な会社だが世界的に有名な会社が親会社で資金はいくらでもあるので新規案件に興味を持つのかも知れない。

帰りの列車が途中で止まって動かない。また遅延である。国有から民営になっても英国病は変わらない。英国人はよく我慢できると思う。日本人なら許さない。もっとも日本の電車や汽車の運行の正確さは諸外国にとっては奇跡だろう。

ロンドンに着いたら6時でラッシュアワーである。その混雑に驚いたというか、その整理されていないのに驚いた。日本なら混んでいてもそれなりに整然としている。それがまったく整理されていない。

理由は二つあると思う。日本の場合は駅の設計段階で混雑を想定し、乗客がスムーズに動けるような動線をつくる。二つ目は国民性もあって自然のうちにルールができる。例えばエスカレーターでも急がない人は左に立ち、急ぐ人は右側をどんどん登っていくようなルールがいつのまにか出来上がる。ロンドンの地下鉄のエスカレーターは東京のそれより上り下りのスピードは日本より速く、危険なくらいである。ところが右左関係なく並んでいるエスカレーターもあったりするので急ぐ人はその間をぬって上る。行列をつくるときも日本人は前との間隔を空けずに上手に並ぶが、こちらでは間隔をあけ過ぎて並ぶ。

ともあれ、公共の交通手段は東京とロンドンを比較したら、その効率、快適さ、清潔さは 雲泥の差であろう。私の持論だが、ことハードになり、インフラをつくることになったら、日本人はきめ細かく、世界的に傑出している。

ロンドンより出張

睡眠不足と時差があるのに朝の8時から夕方の7時まで昼食もまともにとれないほど移動と商談に費やされ、くたくたになってホテルに着いた。お腹はすいているが、 外に出る元気はない。そこで少し横になって休み、中華街にタクシーで行った。ロンドンの中華街もけっこう大きい。世界の中華街で面積が最大なのはサンフランシスコである。店の数が最も多いのは横浜だろう。ロンドンの中華街はニューヨークのそれよりはるかに大きい。

適当な店に入って喉が渇いていたので青島ビールを頼んだ。小瓶で3ポンド(453円)だからリーズナブルだろう。紹興酒を飲みたいのだが、1合とりはない。 ワインはグラスワインがあるのに紹興酒ではなぜないのか不思議である。グラスワインをとったが、600円なのに量が少なすぎる。お代わりはやめて無料のウーロン茶にした。

ロンドンでの活動二日目

8時にH君とロビーで落ち合い、本命の客先を訪問する。弊社には何回か来てもらったことはあるが、こちらから訪問するのは初めてである。中堅ではあるが、 ヨーロッパとアメリカに子会社もある上場会社である。7つの商品についてのプレゼンをしたのだが、1つを除いてすべて興味があるとのこと。H君は興奮してしまった。この7つの商品についての商談を同時並行で進めるとしたら帰国後また忙しくなる。しかも相手の実務責任者が10日後には出張してしまうというので時間の勝負となる。本日、関係先にメールを打っておかなければならない。ホテルに1時につき、近所のファーストフードでサンドイッチを買い昼食にする。

午後は1時半に出発、テニスで有名なウィンブルトンにある会社を訪問。数年前までは優良会社だったのだが、最近は不振で日本の大手に買収された。そのため、 組織編成もあり、担当者は新規のビジネスは始められないと言う。弊社の商品に対していろいろコメントをしてもらったのが、有益であった。日本なら買収されて自分のポジションもどうなるかわからないのに、取引見込み先と会ってゆっくりと意見交換をする担当者はいないだろう。それを平気でやるというイギリスの会社の懐の深さを感じた。

ロンドンに着いたら5時半になっていたので昨日と同様にラッシュアワーの時間にぶつかった。昨日、今日と朝は通勤列車に乗り、夕方はラッシュに乗り合わせると、あたかも私たちもロンドンの会社に勤務しているような錯覚になる。

超繁盛店に行く

夕方はフランス料理に行ったが、これがとても勉強になった。実はこの店の前を通るといつも行列が出来ていて気になっていた。店の雰囲気はカジュアルっぽくて明るい。高級感はない。ホールはすべて黒のスカートとネクタイはしていないが白のYシャツを着ている女性である。したがってプロは一人もいない。

その一人からHave you ever been here before?(当店には以前に来ていただいたことがありますか)と聞かれた。何でそんなことを聞くのかと思いながら、「いいえ、初めてですよ」と答えた ら、次の質問で聞かれた理由がわかった。料理はステーキとサラダのワン・メニューなのである。フランス料理店特有の多彩なメニューはない。ワインリストも 10本くらいしかない。そのセットメニューの値段は19ポンド(2,850円)。ワインは一番安いのが16ポンド(2,400円)で高いワインはない。

「ステーキのソースはどんな味がするの」と聞いたら、「それは企業秘密です」と言うのである。つまり味付けについても店に従って欲しいということである。

サラダはシーザースサラダだが、味付けが少し濃くて食べやすい。ステーキの肉は柔らかい。ソースはピーナツが入っているようだが、醤油が入っているようなサッパリした味がして、普通のフランス料理特有のしつこさがなく、私たち日本人には食べられる。それだけでこんなにはやるのかなと思っていたら、ソースとフライドポテトのお代わりが出来ることがわかった。つまり肉とソースは食べ放題なのである。しかしそのことは大々的にはうたっていない。でも肉とかフライドポテトはもう少しいりますかと聞いてくれるので、すぐにそれがわかる。見ていたら隣の席のアベックはそのソースをお代わりしてパンにつけて食べている。

一緒に行った私の家内は美味しいと言って食べていたが、私は特別美味しいとは思わない。フランス料理なら職人の味が欲しい。いや、フランス料理のまともなシェフならこれはフランス料理とは認めないだろう。それでもこれだけ流行っていたら、有名なフランス料理店でも売り上げはこの店にかなわない。ゆったりしていないから席数が高級フランス料理店の倍はある。しかも回転数が違う。この店は夜だけで3回転はするだろう。

私は良い意味でのショックを受けた。ビジネスで成功するためにはクライアントに対して明確なメッセージを送らなければならない。この店のメッセージはわかりやすい。フランス料理のステーキが3,000円で食べられる、しかも肉もフライドポテトもお代わりができる、行列は並んでいるが、安っぽい店ではない。誰かが「良い店を知っているよ」と言って恋人や友人を連れてくるのに十分な理由となる。

私は「参りました」と言いたかった。クライアントに対して分かりやすいメッセージを私も出せるか、宿題を与えられたようである。

<英会話応用>
弊社の日本における代理店になることは興味がありますか。(Are you interested in working as our agent in Japan?)
はい、あります。手数料やその他の条件はメールでお知らせください。(Yes, we are interested. We would like to receive an email about commissions and other terms.)
弊社は全ての商品に興味があります。他のヨーロッパの会社にはオファーされていますか。(We are interested in all your products. Did you offer these products to other companies in Europe?)
一社にだけはオファーしていますが、今のところ大きな動きはありません。(We have made an offer to only one company, but so far there has been no major movement.)
他社が大きな動きをしたら知らせてくれますか。(Could you let us know if another company makes a big move?)
はい、わかりました。そのようにさせていただきます。(Yes, we will let you know.)

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