飛行機が欠航して目的地に行けない

リンカーン発

本日はリンカーンからセントルイス経由でケンタッキー州のレクシントンに行くことになっている。ところが朝9時半出発予定のセントルイスまでの飛行機が一時間遅れ、そのためセントルイスからレクシントンへの飛行機に接続できないことがわかった。
セントルイスからレクシントンへ行く飛行機はこの次は夜の9時だという。レクシントンでなんと8時間も待たなければならず、レクシントンに着くのは夜中である。冗談ではない。このようなことがないようにとわざわざこのポーションのみトランスワールド航空の航空券を購入したのだ。一人分で5万円も払わされている。このようなことを係員に言ったところ、「それはよくわかっている、だから何とかしようとしている」との答えが返ってきた。
ところがどうもうまくつながらないようである。リンカーンもセントルイスも小さな都市だからもともと便数も少ないのだ。
そのうちに「運転はできるか」と聞いてきた。「なぜだ」と聞いたら「今から車でセントルイスに行けばレクシントン行きの飛行機に間に合うはずだ」と言う。そんなムチャクチャは聞けるものではない。

さんざん調べたりあちこちに電話したりした後に一つの方法が見つかった。次のフライトでセントルイスに行き、その後にピッツパーグに行く、そこからレクシントンに行くという方法だと午後の6時半に着くというのである。ピッツバーグと言えば東部であり、目的地のレクシントンは中部である。
日本を例にして言えば東京から大阪に行くのに、東京から名古屋に行って、名古屋から鹿児島に行き、そこから大阪に行くのと変わらない。これも変な話だが他に方法がないというのなら仕方がない。しぶしぶ承諾した。
ところがセントルイスまでの飛行機が、また一時間遅れたため、ピッツパーグまでの飛行機に乗れなくなってしまったのである。
セントルイスの空港でトランスワールドのカウンターに並んだら係員からピッツバーグ行きの飛行機に乗りそこなったのかといかにも簡単に聞かれたので、私はとうとうプッツンして声を荒げて文句を言い始めた。そうしたらその女性係員が怒らないでくれとなだめはじめた。

アメリカ人は飛行機がどんなに遅れてもいつもジーッと「我慢の子」を決めているが、少しは怒るべきだと思う。そうしなければ事態は少しもよくならないと思う。
もっとも「私はアメリカ旅行は初心者だからアメリカを飛行機で旅行する大変さを知らない」と言われるかも知れない。
すったもんだしていたら中年の男性があらわれ、無料食事券を出すからセントルイスのダウンタウンでも見物し、空港に戻ってディナーを取り、最終便でレクシントンに行くか、あるいはシンシナティからレクシントンまでは車で行ける距離なのでシンシナティまでの飛行機を予約し、シンシナティからレンタカーで運転してレクシントンまで行くか、どちらかの選択肢で納得してもらえないかと説得にかかってきた。
ベテランの苦情処理係のようでさすがにうまい。セントルイスの町は見たことがないから、「セントルイス見学も悪くないな」とも思ったが一泊するならともかく空港まで戻ってくるのが面倒である。夜中に着くというのも避けたい。朝からまともなものは何も食べていないので夕食くらいはちゃんとした食事にもありつきたい。

そこでもう少しねばってみた。そうしたらそばに連れがいるのを見て「あなたがたは何人か」と聞いてきたので、「三人だと答えた」ら、こちらがのめる案を出してきた。
無料食事券は出すからゆっくり中華料理でも食べて、ここからシンシナティまでの6時の飛行機に乗り、シンシナティからはタクシーでレクシントンに行けば午後の9時過ぎに着くというものだ。シンシナティからのタクシー代もかれらが払うという。

これならいいだろうということでこの案をのんで私たちはシンシナティ行きの飛行機に乗り込んだ。話はこのへんで普通は片付くものだが、今回はこれで片付かない。
時間は三時間以上たっぷりあるから空港の中華というのを探して見ようとぶらぶらしていたらシンシナティ行きの飛行機が6時ではなく3時にあるのを発見した。「これでは話はちがう」と思った私はトランスワールドのカウンターにもう一度行き、くだんの苦情処理係りを見つけてそのことを言ったら、「そのフライトは満席である、でもキャンセル待ちでカウンターに並ばれるのは自由ですよ」とのことだ。これだけ遅れが出ているのだからキャンセルが出ている可能性があると思った私たちは並ぶことにした。

この予測はあたり、キャンセルが出たため三人分の席はあるとのことである。「しめた!」とチェックインしてその飛行機に乗り込んだ。
シンシナティまでの飛行機は遅れずに飛んだ。ところがシンシナティに着いた後、来るはずのタクシーが来ないのだ。30分経ったので聞きに言ったら「道路で事故が起きているので遅れた」とのこと、何だか私たちが会社に遅刻するときの言い訳みたいである。
1時間20分遅れてタクシーはようやく来た。ワゴン車だが、Executive Transportation(特別送迎車)と書いてある。英語になると何でもカッコいいのだが内容はともなわないことが多い。

この特別送迎車も1時間でレクシントン空港に着く予定がなかなか着かない。道を間違えたのではないかと思った私は「レクシントンは来たことがあるか」とドライバーに聞いたら初めてとのことである。
そうとわかっていれば私ももう少し注意して道を見ていたのにと思った。たしか、レクシントン空港の標識が見えた後、かなり走っているのに不思議だなとは思っていた。そんなことをプロの運転手に言ったら悪いと思っていたので何にも言わなかったが、考えてみればこの考えはアメリカ的ではない。

げんにこのドライバーに「時間がかかりすぎではないか」と言ったら「やはりそう思うか、実は自分もそう思っていたのだ」と言ってくる始末である。
結局、この幹線道路を出ることになった。ところがまっすぐ行ったほうがいいのか、後戻りしたほうがよいのか、わからないのである。無線で会社に聞いたらと言ったら無線が通じないと言う。
やっとガソリンスタンドで給油している人に聞いて道はわかった。やはり行き過ぎたのである。

もう私は運転を任せっぱなしにできない。しばらく走っていたらレクシントン空港という標識が出てきたのでもう少し走ったら右に曲がるのだと確認しあい、やっとレクシントン空港に着いた。ドライバーはすまないと謝っていたが、5ドルのチップはしっかりと取った。
アメリカというところは「自分の責任で」(at your own risk)物事を進めなくてはいけないところである。日本だったら考えられないトラブルが続出するからだ。
日本では日本航空や全日空のフライトに遅れが出たため、乗客のために札幌から旭川まで車と運転手が用意されたら、その運転手は約束の時間にきちんとあらわれ、もちろん道など間違えず旭川まで連れていってくれるだろう。このへんの信頼感はアメリカと日本では天地雲泥の差がある。

さて今度はレクシントン空港の手荷物受取所に行ったら届いているはずの手荷物が届いていない。トランスワールド航空のカウンターに行き、どこにあるか調べてもらったが手掛かりがつかない。
おそらくピッツバーグからの次の便で届くか、あるいは明日の朝の便で届くか、どちらかであろうとのことである。明日の朝では困る。いくらアメリカでもジーンズとサンダルでは大学を公式訪問することはできない。

ともかく待ってみようということになった。幸い次の便で届いたのでホットした。シャトルで宿舎まで行ってチェックインしたのが10時過ぎ、近距離の移動に一日かかってしまった。
レストランはどこでも11時には閉店すると聞いていたのでチェックインせずに荷物はあずけたまま急いでレストランに行った。今日は、初めてのまともな食事だった。

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