契約までいかないときは基本合意書をつくる

ソールトレークシティ


ユタ州の首都である。モルモン教の盛んな都市であり、極めて治安のよいところとして有名な都市である。もっとも都市といっても四方は山が見える。
アメリカ人が東京などの日本の都会に住むと不満を持つ理由に山や海に行くのに2時間もかかるということをよく聞かされていた。この意味がよくわかった。ここなら都市のど真ん中から狼が住んでいる山まで車で10分で行ける。

某月某日
午前10時から取引先のシンシアと商談。
ソールトレークシティの英語はわからないと聞いていたので緊張して打ち合わせに臨んだが、そんなことはないのでホッとした。ほとんど聞き返すこともなく英語はよくわかる。そうすると交渉はどんどん進んでいった。
基本的な合意が成立したが、細部まで決めることは今の段階ではできない。どうすればよいかという話になったので Letter of Intent を交わそうと提案して、快諾された。Letter of Intent は日本語に訳すと基本合意書あたりだろうが、双方が基本的な点については合意しており、今後正式契約を締結する意志があることを明記したもので、契約書と同様に拘束力がある。インターナショナル・ビジネスで契約締結を進めるときには便利な方法である。

夜はシンシアに聞いたシーフードの店に行ってみた。ところが会員でないと入れないというのである。よくよく聞いてみたら10ドル払うと1ヶ月有効の臨時会員になれるというのでそうしてもらったが、ダイニングルームは予約が必要であり、しかもすぐの席はないというのでランクが一つ下のカフェに入れてもらった。
ところが正式会員でないからだろうか、ウェイトレスのサービスがいまひとつ心がこもっていない。
しかしカフェでは最も高価なメニューと言っても48ドルのシーフードなのだが、それを2つ注文したら態度が途端に変わった。急に愛想がよくなったのだ。バターのお代わりを頼んだら、はじめに持ってきてくれた3倍くらいのボリュームのあるものを持ってきてくれた。
チップが千円もいかない客と3千円になる客とではサービスが変わっても当然だという気持ちはわかるとしてもここまでハッキリと態度に出されると滑稽である。アメリカではお金を使わない客は大事にされない。

某月某日
本日はロスアンゼルスに行く予定なのだがフライトの出発が遅い時間なのでチェックアウトを遅くしてもらえないかと(late check-out)交渉したら午後2時までならOKということになった。
それでもまだ時間がかなりあるのであるモールまで電車で行ってその地下の飲食店街に行くことにした。ホテルの従業員は、電車は時間通りに走っていると言っていたが思った通り、いくら待ってもこない。仕方がないのでホテルの前に止まっているタクシーで行くことにした。この町は流しのタクシーがないので帰りの足を確保しておかないと困ってしまう。そこでこの運転士の電話を教えてもらっておいた。
アメリカで公衆電話(pay-phone)から電話してタクシーを呼ぶのはわれわれ外国人にとっては難儀である。なぜかというと自分がいる場所を伝えるのが大変だからである。有名なモールでも表とか裏とか私たちの知らない表現がある。正確な番地を聞かれてもわかるわけはない。それがいやなのでこのタクシーの運転士には私が降りたところを覚えておいてくれと言っておいた。
そのタクシーの運転士に電話をしてさっき降りたところにいると言ったらすぐに来てくれた。

ソールトレークシティは変わったところである。都市機能はあるのにダウンタウンでも人があまり歩いていないし、車も少ない。それでもレストランに行くと混んでいる。コミュニティの一員になるとモルモン教の影響が強いのがわかるそうだが、筆者はまた来てみたい町である。

ロスアンジェルス
某月某日
空港でタクシーを拾いホテルに向かったがなかなかホテルに着かない。おかしいなと思っていたらドライバーが道に迷ったから地図を見ると言い出した。「わかった」と言って走り出したが、もと来た道を戻りだしたのである。
しかも同じようなところをぐるぐるまわりだした。霧の濃い夜だったこともあって私は不安になってしまった。
アメリカでタクシーに乗ってドライバーが道に迷ったらまかせっぱなしではダメだ。私は濃くなる霧を見ていてますます不安になる気持ちを振り切って後部座席から身を乗り出し方向を探った。そしてある交差点でまっすぐに行こうとしていたところを左へ曲がってもらったらすぐに着いた。「左へ曲がって」いう簡単な英語がどういうわけか一瞬でてこなかった。
メーター通りの料金を払うのは納得できない。いくら払えばいいか(How much do I owe you?)と聞いたらメーター料金より8ドルまけてくれた。
アメリカではタクシーに乗った後に道がわからないということがよくあるから注意が必要である。名の通ったホテルでも関係ない。正確な住所がないとたどりつくことができないことがある。

某月某日
本日は休日で仕事はない。昼は軽く済まそうと思ってあるカフェテリアで9ドルのサラダを頼んだら東京のファミリーレストランでは900円くらいで出てくるサラダの4倍くらいはある。しかも入っているものが高カロリーのものが多い。すべて食べたら軽い食事どころではない。
アメリカで出てくる一品料理の量はなぜこれほど多いのだろうかといつも考えてしまう。飲食店の関係者に聞いてみると、少なくすると客が来なくなるそうである。アメリカ人が太るわけである。

あるモールに寄ってみた。日本なら5万円以上する靴が140ドルで売っていたので興味を持ち、お店の人に声をかけたら「少し待ってくれ」という。他の客の接客中なのだろう。アメリカの「少し待ってくれ」は「少し」ではないので他のところをぶらぶらして30分くらいしてそこに戻ったら申し訳なさそうにおおげさなシュラッグ(shrug)をしているので、笑いながら入っていった。
サイズがわからないので試しにはいてみたいが、筆者が裸足でサンダルを履いているので靴下がないというようなことをブツブツ言っていたら他の人にもはかせたのだろう、お世辞でもきれいとは言えないヨレヨレの靴下を持ってきて、これを履いてくれと言うのだ。
これも文化のちがいだろう、日本では高級靴店で他人の履いた靴下を持ってくることはありえない。
結局、サイズが合わなくて買わないことになった。それでも Thank you. と言われた。アメリカである程度高いものを売っている小売店のいいところは買わなくても必ずていねいに Thank you. と言ってくれることだ。

某月某日
サンフランシスコ
午後4時から取引先候補の人との面談をする。白人女性でフリーランスだ。世間話として現在のアメリカの労働市場についての話になったが彼女は私のことを日本人と思っていないのであろう、話す英語のスピードが早く、スラングも多いので半分くらいしか理解できない。ついていくのが大変である。
本題に入るが、これから私がアメリカでやろうとしている仕事がやり方も何も決まっていない。それでも協力者が欲しいという話なので理解してもらうには時間がかかる。それでも2時間半くらいの議論で納得してもらい、詳細は再度明日の10時から打ち合わせをすることになった。

夕食はいつも行くColumbus通りのイタリアレストランFigaroにした。イタリア系アメリカ人がやっている店だがオーナーはじめ幹部はイタリア語も話す。イタリア料理は素人でも器用な人は出来てしまう料理だが、この店の調理人は本格派である。

某月某日
午前10時から打ち合わせである。相手の女性は昨日の打ち合わせ事項の要点をタイプしたものを持ってきてくれた。これを土台にして話を進めていけるのでかなり話が進んだが突然この人の話していることがわからなくなった。聞き返してもわからない。もう一度聞き返したらさすがに少し嫌な顔をしたが、説明してくれた。日本では考えられないRetainer fee と言って、言わば前金で払ってくれという商習慣の話なのでわからなかったのである。このように自分には想像もつかないような内容のことを話されているときには英語はさっぱりわからなくなる。
弁護士も含めて打ち合わせをしようということでその話を打ち切った。大枠は決まったのであとはメールでのやり取りで話を進めようということで合意ができた。

アメリカのビジネスパースンのいいところは、形式は無視して話の本質をズバリついてくることだ。その上で利益になりそうだということがわかりだすと眼の色を変えてせめてくる。
アメリカのほうが日本よりビジネスチャンスがあるのはこのためだ。日本人が形式を重んじたりまわりのことを考えたりして判断しようとするのとは大違いである。

午後3時、ソフト開発用のツール購入のためディベロッパーに電話をした。この会社のウェブサイトから日本ではまだ売られていない最新版を購入できることになっているのだが、前バージョンのシリアルナンバーがうまく認識されず、ダウンロードができないという問題を解決したかったからだ。
ところが担当者に電話がつながったら5分で片付いた。支払はクレジットカードで済ませられ、3日以内にフェデックスで東京まで納品するというのである。おまけに500ドルもまけてくれた。
アメリカの会社は、このような対応はメチャクチャ早い。日本ではこのようにはいかないだろう。サービス産業のときはアクションが遅いアメリカだがITとなると途端に早くなる。ウソみたいである。

<英会話応用例>
Q. Is it possible for you to pay us the Retainer Fee? (契約前渡金を支払って頂くことは可能ですか)
A. What is a Retainer Fee? What does it mean? (Retainer fee の意味がわかりません。どういう意味ですか)
Q. A retainer fee is a payment that is made to a professional, often a lawyer, by a client for future services. (Retainer feeとは、弁護士などの専門家に支払う費用で今後のサービスに対する保証金です)
A. So it is an advance payment that is paid to guarantee a lawyer for future services? (弁護士が今後のサービスを展開する時のための保証金としての前金ですか)
Q. That is correct. (その通りです)
A. OK. I will looki into it if you let me have a guarantee that includes more details. (金額も含めた詳細を伺えば検討させていただきます。
A. Apart from this, is it possible for you to make an ordinary monthly consultation contract? (それとは別に通常のコンサルティング契約を締結することは可能ですか)
Q. Yes, it is possible. (はい、可能です)
A. What would be the consultation fee? (コンサルティング費用はいくらぐらいですか)
Q. The minimum fee would be about $500 which can increase depending on the situation. (最低額は500ドルで内容によって増額されます)

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