デンバーの所得は高い

ホテルにチェックインして一時間後からパートナー候補であるビルと商談。この人は自分はアメリカ人ではなくチェコ人だと言う。それでも国籍はアメリカだそうである。
このような説明は私たち日本人を混乱させる。よく聞いてみたら、アメリカで生まれたが幼少のうちの数年間をチェコで過ごし、またビジネスマンになってからもヨーロッパとの交流が多く、そのためアメリカの文化よりヨーロッパの文化のほうが自分にはなじんでいるのだというのである。

商談が始まる前に英語をナチュラルスピードで話していいかと聞いてきた。さまざまなヨーロッパとの取引を経験しているだけに国際感覚は豊かなようだ。私はナチュラルスピードで話してかまわない、もしついていけないときにはそのように言うと答えた。ところが話し始めたらこの人の英語はかなり早口である。しかもふんだんにスラングを使っているためにしばしばわからないところがでてくるのである。
そのためときたま話をさえぎって聞きなおすことになる。このことによって私の英語のレベルがわかるはずなのだが、スラングが使用する頻度は少なくなるどころか、ますます多くなってくるのだ。
自分の話に興奮するとスピードはさらに早くなる。これだけ速いと話をさえぎって聞き返すヒマもない。それどころか初めはなかったのだが、英語も独特のなまりがあって聞き取りにくいのだ。私はいつも思うのだが、アメリカ人は外国人と話すときに何故もう少し配慮をしないのだろうか。

夕食は中国料理店をホテルの人に紹介してもらってタクシーで行った。ところが大勢の人が待っていて、待ち時間がかなりありそうである。あきらめて外に出たがタクシーは流していないのでつかまらない。さて困ったなと思って歩いていたらフランス料理店があったのでそこに飛び込んだ。
ところが値段が高く量が少ないのにビックリした。サンフランシスコと変わらない。後で聞いたらデンバーの生活水準は高く、レストランでの価格はアメリカでも高いそうである。

某月某日
午前10時にビルがホテルに来る。コーヒーショップで商談。その後、有機商品専門店を見学に行く。アメリカでも健康のため有機食品を食べることがはやりだしている。動物の餌まで有機食品なのだ。

帰りに昼食は寿司ということになった。日本人がやっていると言うので私は「こんにちは」と言ってその店に入ったが、日本語が通じないのである。ビルにはわからなかったのだろうが、韓国人がやっているのである。
人間の手でにぎった寿司ではなく、味も日本の寿司とは違う。量だけはかなり多い。私は半分も食べなかった。ちょうど日本の寿司で言うと2人前は残ったので持ち帰ったらどうだとビルにすすめたら、自分はいらないけれどガールフレンドが食べるかも知れないと店から容器をもらって自分で詰めた。
ビルは私が聞きもしないのにそのガールフレンドのことを話し始めた。それによると父親は資産家なのだが、もう死にそうで死んだら遺産が入ってくる。自分は結婚したいのに相手が年上で両親が賛成してくれないそうである。アメリカ人は初対面でもこのようなプライベートで微妙なことをいきなり話してくることがあって私たち日本人は面食らってしまうことがある。
ガールフレンドに電話したら本人は欲しいと言っているということで届けに行くことになった。
日本でははじめて会った取引先と寿司屋に行って食事をし、残ったらそれをテイクアウトにして持って帰ろうという発想はでてこない。ましてそれを彼女のところに一緒に届けに行くなんて発想は漫画の世界でもでてこないだろう。アメリカではそれが何でもなく行われてしまう。

某月某日
ロスアンジェルスへ
ロスアンジェルスに着いたら手荷物の受取所が見当たらない、おかしいなと思って探していたら他の人たちも探しているようで手荷物の見つからない仲間が集まって来た。その中の二人が航空会社職員に質問している、何かわかったのだろうか、みんなでゾロゾロ歩き出したので私たちもその後についていった。10分くらいあっちにウロウロ、こっちにウロウロしてやっと見つかった。
これは田舎の飛行場での出来事ではない。アメリカ第二の大都市、ロスアンジェルスでのことなのだ。まさに漫画である。これもアメリカ的ジョークなのだろう。

ホテルにチェックインしてから明日の打ち合わせをどこでするかについて考えてみた。コーヒーショップがあるか確かめたらあるのだが小さすぎて使えない。上にレストランがあるので行ってみたが、BGMがうるさく、雰囲気もよくないのでここも使えそうもない。
そこでフロントで相談したら会議場があるとのことで見せてもらったが30名以上が使用する会議場であり、レンタル料も高くて適当でない。
そのことを言ったらレストランの隅のスペースが空いているのでそこを使えばいいのではないかと提案してくれ、レストランのマネージャーを紹介してくれた。
料金は後で検討して教えてくれるということであった。すっかり期待して後で聞きに行ったら350ドルというのである。冗談じゃない。顧客サービスの一環としてやるのでそんなに高くはないということなのでお願いしようかなという気になったのに、350ドルだったらシングルの部屋を借りたほうがよほど安い。
他のホテルでこのように空いている部屋を無料で使わしてもらったことは何度もある。
アメリカでよく経験することなのだが、人が困っているときに期待を持たせて後で値段をふっかけてくることがよくある。サービス料金や人を雇用するときの給料でもそうである。このような時のアメリカ人はそのことによってビジネスチャンスを失うという見方をまったくしていない。アメリカ人やアメリカの企業が長期的展望に欠けると言われる所以である。
結局、打ち合わせ用にもう一部屋借りることにした。

某月某日
午前10時からパートナーのデビッドと打ち合わせをする。この人は国籍はタイなのだがアメリカで生まれて育ったため英語が母国語である。タイ語を話すこともでき、タイをはじめとするアジアの企業とも取引経験もあるため、日本人の考え方もよくわかり話は進みやすい。
最近のロスアンジェルスは国際化がさらに進んでいる。150以上の国籍の人が住んでいるそうである。ロスアンジェルスを見ていれば今後のアメリカの国際化の未来が見えるとも言われている。

昼食に行くため道を歩いていたら高い木の枝を切る作業をしているのが見えた。ところが私がそれらの木の下を通っていたとき突然その枝のかたまりがドスーンと私の肩に落ちてきた。私は痛いよりビックリしたほうが先だった。こんなことってあるのだろうか。東京のど真ん中でこんなことが起きたらニュースになるだろう。
そばにいる現場監督みたいな人が私のところに寄って来て"Are you OK?"と聞いてきた。
現場監督がいるなら何故人が通るときは作業をやめさせないのだろうか。日本だったら間違いなく警備員を一人くらい用意して通行人の安全をはかるところである。木を落として通行人を驚かせ、"Are you OK?" はアメリカのジョークとは認められない。
昼食がすんでホテルに戻ろうとしたらホテルの前の木を切っていたので回り道をしてホテルに入った。

夕方5時から提携先候補ショーンと商談をする。この人はあるe-コマースの会社の社長だったのだが、最近のIT不況でその会社が倒産してしまったそうだ。したがって普通なら私なんかとは対等の話は出来ない人なのだろう。
国籍はアメリカだがもともとはイギリス人だったため、アメリカに対してさめた見方をしている。
そもそもアメリカがいろいろな国にさまざまな援助をしているのに何故感謝されないどころか、嫌われているのだろうかと聞いてきた。私が考えていたら、それはアメリカが与えたものは golden handcuff(金の手錠)だというのである。つまりせっかく金を与えているのに、それは自由を奪う手錠だったのである。
この人は英語の表現がわからないとていねいに説明してくれるのでありがたい。
もう一つ表現を教わった。
I would rather have 50% of something than 100% of nothing.(今、100%すべてを期待するよりも、取り敢えず半分だけもらう)というものである。商談をしているより英語の勉強会をしているみたいである。

夕食はサンタモニカに来ると必ず行く中国料理店に行く。ここは東京や横浜だったら10日前から予約しないと食べられないような魚料理が25ドルくらいで食べられる。
今日は言いたい放題のわがままを言った。メニューにない料理を作ってくれというだけではなく、おまかせで何か作ってもらいたい、そして作る前に何を作るかを中国語で書いてもらいたいとかである。
ホールの人に調理場には客が払うチップは分配されるのかと聞いたら、されないと言う。それでは私が現金で調理場の人にチップを払ったら渡してくれるかと聞いたらそれはかまわないと言う。鍋を振る人が3人でアシスタントが2人だそうなので30ドルを渡した。
ホールのその女性は渡したらすぐに来て、調理場がチップをもらうのは初めてで感激したと伝えてきた。

<英会話応用例>
会議場について相談する (Consulting about a meeting room)
Q. Is it possible for me to rent a small meeting room? (小さな会議室を借りることは可能ですか)
A. Yes, we have a meeting room for a rent. (会議用の部屋はあります)
Q. How much is it for a half day? (半日でいくらですか)
A. It is 300 dollars.
Q. Is it possible for me to use a small portion of your coffee house for these meetings? (コーヒーハウスの一角をその会議用に使うのは可能ですか)
A. Yes, you can use it as long as you want. (何時間でもお好きな時間は使えます)
Q. Is it possible to rent a room or warehouse that is not being used?(使用していない部屋とか、倉庫とかを数時間貸してもらうことは可能ですか)
A. I will ask my superior and let you know. (上司と相談してご返事します)


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