【 第1章-8 】
  高級料亭に行く

 フランスの映画監督と知り合いました。
 「芸者ハウス」に連れていけというのですよ。
 私はそんなところに行ったことがなかったのですが、いろいろと手づるをたどって、赤坂の高級料亭に行きました。
 もちろん「いちげんさん」はお断りで、普通は支払いはつけなのですが、事情が事情なので頼み込んで現金払いにしてもらいました。
 予算としては、現在の貨幣価値からしたら、2人で20万円くらいでしょうか。
 初めての経験なので、あがりっぱなしです。
 座敷に案内されたら、自分がいつも座っている座布団の3倍くらい厚い座布団が敷いてあり、昔の殿様が使うひじかけがあったりして、正座したらよいのかあぐらでもよいのか、よくわかりません。
 料理だって、高級な和食なんて食べたことがありません。
 こんなところで通訳なんて、いくら無料通訳でも大変だなと思っていました。
 ところがびっくりしたことに、呼んでもらった芸者さんが、けっこう英語が話せるのです。

When did you come to Japan?
(日本にはいついらしたのですか)
Just a week ago.
(ほんの一週間前です)
What wind made you come to Japan?
(日本にはどんな風の吹きまわしでいらしたのですか)
Well, I wanted to see beautiful Japanese women.
(日本の美しい女性を見に来たのですよ)

 こんな感じで話は進みます。
 お互いにけっこうやるじゃないですか。
 私は通訳する必要がまったくなくなり、一緒に会話や食事が楽しめるとうれしくなりました。
 ところが一つ失敗してしまったのです。
 大きなロブスターを、教えてもらいながらやっと食べ終わったのですが、その後に出てきた、手を洗うための水を間違えて飲んでしまって笑われたんですね。
 穴があったら入りたかったですよ。

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