【 第3章-9 】
  「興味がありますか」と聞くのは失礼ではない

 ある通信機器メーカーの輸出代理店として、売り込みに中近東に出張しました。
 アラブ人は扱いにくい人種と聞いているだけに不安です。
 まずはクウェートです。

 訪問先のベベハニ社は、現地では有名な会社です。
 社長のベベハニ氏は多忙な人だと聞いていましたので、型通りのあいさつの後、いきなりカタログを出し、

Are you interested in these products?
(これらの商品にご興味がありますか)

と聞いてみました。
 いろいろ質問を受け、再度担当者もまじえてまた会いたいとのことでした。
 ところが商談が終わってから、案内役のアラブ人から注意を受けました。次のように言ってから、話を進めるべきだったというのですね。

 I came here to try to find out a good company who is interested in working as our agent.
(私は弊社の代理店となってくれる、優良な会社を探すために当地に来ました)
Are you interested?
(ご興味はおありですか)

 このように、前置きとしてクウェートに来た理由を説明し、相手の意向を聞いた上で、詳しい説明に入るべきだったと言うのですね。
 彼の言うことは正論です。一本とられたわけです。

 Are you interested?(ご興味がありますか)は、実に便利な言葉です。
 日本語ですと、売り手が買い手に「ご興味がありますか」とは聞きにくい場合があります。
 たとえば車やコピーマシーンのセールスマンが「この商品にご興味がありますか」と聞いたりしたら、「興味ないから帰ってよ」と言われてしまいますよね。
 また会社に採用してもらいたいと思っている人が、人事担当者に会って「私の経歴にご興味を持っていただけますか」とは言えないと思います。つまり日本語では、力関係が下で何かを頼み込む側は、この言葉を使用することはできません。
 ところが英語ではセールスマンが使っても失礼ではありませんし、リクルート希望者も「私の採用に興味がありますか」(Are you interested in employing me?)と平気で聞けますし、聞かれたほうは、興味があればはっきりYes, I am. と言ってきます。

 ところで英米人は、セールスしているときとセールスされているときの態度はあまりちがいません。
 日本人ですと、セールスしているときは、言葉づかいはもちろん、行儀や態度も気をつけます。セールスするほうは足を組んだりしませんよね。英米人はそんなこと気にしません。
 とくにアメリカ人は、日本人的感覚からしますと、ふだんから行儀はあまりよくありません。
 デスクに座って足をブラブラさせながらセールストークをして、最後にAre you interested?(ご興味はありますか)とやっているんですね。

 リクルートで思い出しましたが、人事募集の際、よく欧米人から言われる苦情があります。
 日本の会社では、採用がだれかに決定した後や、その人が候補からはずされているときでも「まだ検討中です」と言ったりして、はっきり断らないことがありますね。
 彼らは、これがけしからんと言うのです。
 彼らの論理としては、応募にもれたからといって、プライドが傷つけられることはなく、したがってはっきりと断ってもらったほうが、次の就職先をすぐに探し始められて合理的だというのですね。
 このことを聞いてから、私は問い合わせの電話があると、はっきりと、

Im sorry but the position has been filled.
(あいにくですが、すでに決まりました)

と言うようにしています。そうするとそんなにがっかりもせず、Thank you very much.とていねいにお礼を言って電話を切る人がほとんどです。

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