【 第3章-13 】
  皮肉の応酬

 さてクウェートのゲストハウスでの宴は、全世界の名酒を味わっているうちに盛り上がってきました。
 この宴席に、ベベハニ氏の会社でマネージャーをやっている人が同席していたんですね。
 この人は飲まなくてもよくしゃべる人なので、私はいつも、

You are talkative.
(あなたは話が好きですね)

と皮肉を言っているのですが、この人が、

Friendship is more important than business.
(友情はビジネスより重要である)

と長談義を始めたのです。真実はともあれ、アラブ人はこの言葉が好きなんですね。
 ニューヨークあたりでやり手のビジネスマンに言ったら、Bullshit.(うそでしょ、ばかばかしいという意味)と言われるかも知れませんがね。
 それでとくとくと、

I always like to share food with my friend.
(友人となら食事も分け合う)
I always like to share a room.
(部屋も共有する)

と終わらないものですから、味方であるはずの上司のベベハニ氏に、

You always like to share everything, don't you?
(全てを共有したいんだろう)

とまぜっかえされてしまったのです。本人がキョトンとしていたら話が他のほうにいってしまい、本人が不得意な分野でいろいろ質問され、やはりベベハニ氏のほうが正しいということになり、

You see, manager is always better than his employee.
(いいかい、経営者はいつも従業員よりすぐれているんだよ)

なんて言われてギャフンでしたね。後はみんな酔っ払って、言いたいことを言ってお開きになりました。

 このtalkativeは「よくしゃべる」ことを意味しています。少し自分はしゃべりすぎかなと思ったら

Well, I am talkative.

と言えば相手は否定してくれますから、そしたらまた続ければいいわけですよ。
 あるいは、

I think I spoke too much.
(少ししゃべりすぎました)

でもいいですね。
 bullshitはブルシットと発音し、もともとの意味は「雄牛の大便」という意味ですが、われわれ日本人が「ウソー、そんなバカな」とか「バカバカしくて聞いていられない」というのと同じニュアンスで使われます。
 スラングでもfuck(ファック) やshit(シット)ほど下品ではありませんから、私たち日本人でも使ってもよいと思います。
 さきほどの例のように、友情よりお金を大事にしている人がFriendship is more important than money.(お金より友情のほうが大切だ)なんて言ってきたら、Bullshit! とたったひとことで痛烈に否定できるわけですから、便利な言葉ですよね。
 ただし、親しい人との会話以外には使えないのは当然です。

shareという言葉も便利です。

share joys and sorrows
(喜びと悲しみをともにする)
share expense
(費用を分担する)
share the dictionary
(辞書を一緒に使う)

など応用範囲がきわめて広い言葉です。
 share には日本語のシェア、つまり市場占有率の意味もありますが、この意味でshare を使うときはmarket share とかsales share と言わないと通じません。
 例えば「キリンビールは日本で六割のシェアを占めている」と言いたいのであれば、
Kirin beer accounts for a 60% market share in Japan.
となります。
 「占めている」はaccount for で、これは覚えていないと絶対に出てこない言葉ですね。
 最近私が覚えた表現で面白いのは、lions share(ライオンズ・シェア)です。百獣の王、ライオンのshareで「最もよい取り分」というような意味です。

 manager は日本語のマネージャーという意味もありますが、経営者という意味もあります。よく経営者側や経営陣ってなんていうのかとよく聞かれますが、management(s)でピッタリです。
 「単数か複数か、どっちがいいの」なんて聞かないでくださいよ。そんなこと気にするから、スラスラと英語が出てこなくなるのですよ。アメリカ人だって、これ、わかる人は少ないですから。

 ついでにmanaging director とあると、すぐに専務取締役あるいは常務取締役と訳す人がいますが、代表取締役を意味しているときのほうが多いのをご存知ですか。
 私も翻訳の仕事をやる前までは知らなかったのですが、中近東や東南アジアではmanaging director と言うと代表取締役を意味することがほとんどです。

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